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    2023-06-15 10:16:00

    羅倩儀=文

    鄒源=イラスト

    3人は家に入ると、それぞれ忙しくし始めた。陶雅は台所に入ると米をとぎ、食事の支度を始め、息子は四角いテーブルの上で宿題をし、夫はソファに身を沈めてスマホ(スマートフォン)を見ていた。彼は仕事で処理しなければいけないことがあると言っていたが、それが本当かどうか陶雅には分からなかった。 

    料理の片手間に、彼女はいつものように子どもの勉強を見守り、野菜の下処理をしながら、子どもが分からない問題にちょっとヒントを与えていた。ソファの上で突然夫が笑い声を上げたが、どうやら面白い動画を見ているみたいだった。陶雅は夫の方を見て、軽くため息をつくと、台所へと戻っていた。 

    晩ご飯の後、宿題を終えた息子は、うれしそうにテレビをつけた。息子はいろんな面白い動物を見るのが好きで、いつも繰り返しそうした動画を見ていた。 

    「パパ、ここに来て僕と一緒に見ない?」と息子は父親を熱心に誘ったが、スマホをいじっている父親はそれを断った。 

    陶雅はこの様子を見て、思わず怒りを感じずにはいられなかった。 

    ずっと長いこと、彼女はほとんどの時間を育児と家事に費やしてきた。息子は彼女の教えによって、物分かりの良い、いい子に育ち、これは彼女が誇りとすることだ。しかし、息子は動物動画を見ようと彼女を誘うことはなく、しきりに夫に誘い掛け、また夫はそれに応えようとしない。 

    時に、息子と夫の顔に視線を送っていたが、息子が「見て、タツノオトシゴだよ。かわいいね」と叫ぶのを聞いた。夫はおざなりに顔を上げて見て、いい加減にうなずいていた。 

    何日も何日も、息子はウキウキと、一緒に動物を見ようと父親に誘い掛けた。しかし陶雅は、息子が「タツノオトシゴ」ばかり話題にしているのに気が付いた。どうして息子がそんなにタツノオトシゴが好きなのか、分からなかった。 

    夫は息子が連日見せる好意をむげにしたくなかったのだろう、一緒に動物を見始めた。親子は時に朗らかな笑い声を上げていた。陶雅はうらやましいと思ったが、またほっとした。 

    ある日の夕方、彼女はいつも通り、家に帰るなり、台所に入って忙しく立ち働き始めた。間もなく、夫が身をかがめて入って来て、笑いながら言った。「大コックさま、私がお手伝いいたしましょうか?」。陶雅は驚いた。「どうしたの?今日はやらなきゃいけない仕事はないの?」 

    夫は気まずそうに笑って言った。「そんなに忙しくはないよ。これからはもう忙しくはない」 

    陶雅は夫の突然の変貌に理解がつかなかった。すると、夫は彼女に聞いた。「君はタツノオトシゴを知っているかい?」 

    タツノオトシゴという生き物は、天博克罗地亚国家队赞助商-天博克罗地亚官网が育児をするのだという。メスのタツノオトシゴが産卵するとオスのタツノオトシゴの中で受精し、天博克罗地亚国家队赞助商-天博克罗地亚官网は、受精卵を自分の体にある特別な育児袋に入れ、受精卵が成熟し、ふ化するのを待つのだ。 

    夫は、自分が小さなタツノオトシゴにも及ばないと感じ、恥じたのだという。今までずっと、基本的に陶雅一人が苦労してきた。「これからは、君と分担して子育てや家事をやるよ。君一人に全部やらせるわけにはいかない」と夫は繰り返した。 

    「あなたはタツノオトシゴの特性に本当に詳しいのね」。陶雅はふざけて言った。 

    「息子が毎日僕にタツノオトシゴを見せるんだから、詳しくならないはずがないだろ?あいつ、わざとしたのかもしれないけど」。夫は手早く肉を切りながら、ほほ笑んで答えた。 

    陶雅は思わずにっこりした。向こうにいる息子を見ると、彼はちょうどテーブルの上から顔を上げ、彼女に得意そうな笑顔を見せていた。(2022年発表) 

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